自民党総裁選の推薦人とは?なぜ必要か・腹黒い(?)仕組み等をわかりやすく解説!

自民党総裁選 推薦人 分析

2021年9月17日に告示され29日に開票予定の自民党総裁選

この総裁選に出馬、立候補するには推薦人なる人物を20人、国会議員になっている党員から集めないといけません。

この推薦人とは一体どんなシステムで、これがあることによって自民党総裁選の結果やその後の政治がどう決まってくるのでしょうか。

今回はそのへんの素朴な疑問について解説します。

 

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総裁選立候補者が集めないといけない推薦人とは一体何なの?

まず、自民党の総裁を決めるシステムについて見ていきましょう。

自民党総裁選 仕組み

出典:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/66481.html

この通り、誰でも立候補できるわけではなく、20人の推薦人が必要です。

何故推薦人を20人確保しないといけないかというと、誰でも気軽に毎回立候補できる状況を作らないことが1つです。

都知事選を見て分かる通り、一定のお金(供託金300万円)さえ用意すれば誰でも立候補できるようにしてしまうと、売名目的の立候補者…いわゆる泡沫候補や、誰かの得票を個人的な感情で妨害するような立候補者が出てしまいます。

こういう人

そこで、20人ほどの支持者を党内議員で確保できる議員だけが立候補できるようにして、乱立を防ごうとしているのです。

この20人というのがなかなかのハードルでして、立候補を表明したものの20人の推薦人を獲得できなかったために出馬が叶わなかったという議員も過去にはいます。

推薦人 20人

また、推薦人にとっては、1人1名しか推薦できないので、誰を推薦するかで自らの立ち位置を示すことになるので、気軽に推薦できないという要素があります。

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これまで味方だった人を推薦するのが筋かもしれないし、勝ち馬に乗った方が自分の出世に好影響を与えるかもしれないし、と、慎重を期するべき場面なんですね。

あるいは、勝ち目のない候補者を支持してその人が落選したとしても、今回推薦して、そして2〜3年後にもう一回推薦人になって当選したらどうなるか。その首相とは、良い関係を築けるはずです。

一方でもし勝ち馬に乗るべく下克上、裏切りのアクションを取った場合、それで失敗したらダメージを受けますし、成功したとして、数年はよくても10年後に地獄を見るという可能性もあります。

はたまた、熟考した結果推薦人になることを断った場合も、それが吉と出るかは潮目次第です。

と、推薦人1つとっても奥深いゲームが展開されているんですね。

推薦人

また、自民党の議員の殆どは派閥で動いていますので、どこに属しているかもポイントです。推薦人を頼む人も、頼まれる人も、独断では決められない状況もあります。

今回立候補しようとしている高市早苗さんの場合、以前は町村信孝派でしたが現在は無派閥です。なので、誰に頼むかで現在苦労しているという情報もあります。

ただし、無派閥といっても何らかの形でどこかの派閥から後押しを受けたり、利害の一致する場所ではどこかの派閥に寄った活動をしています。完全なる一匹狼は、自民党議員の中にはいないということです。

ところで菅義偉首相も、無派閥でした。これは、自民党総裁になった人の中ではレアケースではありますね。

立候補者は、自分がどこの派閥にいるかで推薦人と票のボリュームが決まってきますので、そもそも、誰をボスにするかでも、自分が将来自民党総裁になれるかどうかが決まってくるのです。

派閥に属していても、自分のいる派閥に加えて無派閥の議員、他派閥の議員から推薦を受けるケースもあります。同じ党内でも、敵味方、利害というシビアでおっそろしい勢力図があるんですね。

いずれにせよ、誰を推薦するか、しないかで自分の将来も変わってしまうという世界。

かつて、アメリカで同時多発ナントカが起きた際、アーミテージ国務副長官(当時)が柳井俊二駐米大使(当時)に、

『Show the flag.』(日本は立場をはっきり示しなさい)

と語ったと言われています。

同じく、自民党総裁選で立候補者から推薦人を依頼される人においても、この『Show the flag.』を突きつけられているわけです。

誰かを推せば、誰かを敵に回すことになる。しかも同門の組織の中で。

政治家って胃薬が手放せない職業だと思います…。

 

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自民党総裁選の推薦人になるメリットとは?

ところで、推薦人はなぜその立候補者を推薦するのでしょうか。頼まれたから、付き合いで。なんていう簡単な話では勿論ありません。

推薦した見返りが約束されているから名前を貸すわけでして、それは、当選した暁には後の組閣や国会のあれこれに関して、何らかの利益を受ける前提があるはずです。

また、落選したとしても、『推薦人になってあげてよかった』という結果を求めるでしょうから、立候補者にとっては『借り』を作る状態ですね。

そう考えると、自民党総裁になりたかったら、いろんな人から借りを作らないとなれないということになります。ワンマン社長みたいな振る舞いはできない、と。

昔は、この推薦人の持つ権利をお金で買うという行為が裏で行われていたと言われています。1人1億円なんて噂も聞いたことが…。まあ、そうですね。あと1人で20人…という場面だったらその金額は現実的です。総理大臣になれるかなれないかの分かれ目ですので。

というか、選挙でもなんでも、そういうやり方は古今東西で行われてきた歴史はあるでしょう。

あるいは、直接的な金銭の授受ではなく、結果的に金銭的な利となる何かを提供するとかですね。

綺麗なところでいうと、自分が目指している政治を叶えてくれそうな人だ、政策の内容が合致している、といった、理念・方針・思想の繋がりで推薦人になるということももちろんあると思います。

ただし、そこでの繋がりが数年後に自らの不利を生み出してしまう危険もあるわけで、この当たり外れの見極めが、党内政治を安全に泳いでいく鍵となるのです。

 

高市早苗

出典:https://www.instagram.com/p/CBe2XF2JrOq/

高市早苗は20人の推薦人を集められるか??

現在、無派閥の高市早苗さんが、総裁選に立候補すべく推薦人を集めているところです。

誰に依頼するか、という選定に際しては、まもなく実施される党役員人事の事情も絡んできます。党役員になる人にこの推薦人を依頼するのはNGという不文律が自民党内にあるので、そこを外してお願いをしに行くことになります。

安倍晋三さんが高市さんへの支援を表明しているので、安倍晋三さんが属する細田派から推薦人を出してもらえる期待があります。

それから、野田聖子さんが過去に立候補しようとして、でも推薦人を20人集められなくて断念した、という例があります。

野田聖子さんは今回も立候補にチャレンジするそうなんですけど、立候補するのはぶっちゃけ、総裁に本当になるためではないと言われています。

立候補すれば、周囲の”場”が動く。総裁選に立候補したという事実が生まれる。その材料でできることが増えたり、支持者を増えたり、というように、立候補というアクションを起こすこと自体に何らかのメリットがあると考えていいでしょう。

それが何なのかは本人にしかわからないところではありますが、『総理大臣になれる可能性を持っている状態』を手に入れること自体が、普通に考えたら凄いことではありますよね。

もし今回、高市早苗さんが過去の野田聖子さんと同様に20人を獲得できず頓挫したとしても、『日本初の女性総理』が誕生する期待を日本中に打ち出した功績というか、インパクトは残せますよね。これが次の選挙でも活きてくるという可能性もあります。

 

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推薦人制度は生馬の目を抜く弱肉強食な世界である

もう1つ。

例えば候補者Aと候補者Bの一騎打ちみたいな総裁選があったとして、Aが優位でBが負けそうな状況があったとします。

しかし、もしここで候補者Cも立候補したらバランスが崩れて、Aに行くはずだった票が主にCに流れ、Bがトップに立つという状況も起こりうるんですね。

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すると、BをAに勝たせたい人がやるべきは、BがAの票を奪うことではなく、Aの票をCに移動させることになります。

だから、Bを支援する人は、Cを支援するわけではないけどCに立候補してほしいということになりますよね。

だから、裏で手を回してCに立候補する理由(落ちても何かメリットがある)を与え、推薦人も与えるという仕事をするわけです。

こういう裏側を想像してみると、落ちることが確実な人が総裁選に出馬する意味も見えてきますし、大人の戦いって非常に複雑なんだなという気分にもなります。

捨て石出馬噛ませ犬、なんていう表現もありますけど、勝ち目のない戦いに臨む捨て石候補も、実は拾うために出ていくということもあり得るんですね。

推薦人制度って、とにかくディープで、やや腹黒…いや、大人な世界だと思った次第です。

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