松坂桃李さん主演の映画、『孤狼の血 LEVEL2』を劇場で観てまいりました。
今回は、この作品の感想をお届けしたいと思います。
いくらかネタバレ要素もありますので、これから観賞する予定の方についてはその旨、ご了承頂ければと思います。
平成初期に生きた男達のほとばしる熱気が令和で炸裂してます!
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『孤狼の血 LEVEL2』は前作を上回るアクション大作!(感想)
この『孤狼の血 LEVEL2』は、原作から独立したオリジナルストーリーで展開されています。
広島県警の伝説の刑事・大上が亡くなってから3年後、大上の遺志を受け継いだ日岡秀一は、裏社会を取り仕切っていた。そこに出所してきた“悪魔”こと上林が現れ、状況は急転し、日岡は絶体絶命のピンチを迎える。
原作の小説では『孤狼の血』の後に続編の『凶犬の眼』、『暴虎の牙』がリリースされているのですが、今回のLEVEL2は時系列的には、『孤狼の血』と『凶犬の眼』の間に起きた出来事という設定かなという雰囲気です。
[the_ad id=’580′]白石和彌監督としては3作目も視野に入れているとのことですが、それもオリジナルストーリーにするイメージのようです。
先のことは考えずに書いていますが、確かに日岡はこのままでは終われないですよね。『孤狼の血 LEVEL2』が盛り上がれば、いつか日岡の物語にちゃんと決着をつけたいなと思っています。桃李くんが40歳、50歳になってから作るのも面白いかもしれませんしね。いずれにせよ、ヒットしてくれれば可能性は見えてくると思います!
引用元:https://www.banger.jp/movie/62713/
今回は、前作で役所広司さんが熱演した大上章吾の後を継ぐ日岡秀一を松坂桃李さんが引き続き演じています。
そして、日岡に立ちはだかる強敵に、鈴木亮平さん演じる上林成浩というキャラが登場。この鈴木亮平さんが強烈に悪い、怖い!
予告編でも鈴木亮平さんの恐ろしさがメインになっていて、本編でも勿論それはしっかり描写されるのですが、他にも濃厚なキャラの登場人物がバンバン出てきて、最初から最後まで飽きさせなかったですね。『孤狼の血 LEVEL2』は。
まず、実際に観た私が思う見どころをお伝えしていきますね。
『県警対組織暴力』のオマージュ要素は今回もバッチリ!
まず、この『孤狼の血』『孤狼の血 LEVEL2』の2作品をより楽しみたかったら、同じ東映の『県警対組織暴力』も観ておくことをおすすめします。予習でも復習でもいいので、『孤狼の血』シリーズをより理解する補足資料になりますので。
『孤狼の血』は、『県警対組織暴力』のオマージュ要素が強いです。というか、もう下敷きにしちゃってるでしょう。
『県警対組織暴力』では菅原文太さんが裏社会をコントロールする悪徳刑事(久能徳松)を演じていますが、これが1作目の大上にあたります。そして、山城新伍さん演じる後輩刑事が日岡になります。
そして、江口洋介さんが演じた尾谷組若頭の一ノ瀬守孝が、『県警対組織暴力』では松方弘樹さん演じる広谷賢次です。
『極道は顔でメシ食うとるんで!』
のセリフは、広谷賢次のセリフそのまんまです。
LEVEL2では、日岡が菅原文太さんの久能(くのう)刑事を後継している感じで、黒スーツでアグレッシブな仕事を魅せてくれます。
そして松方弘樹さんのパートを、LEVEL2では鈴木亮平さんが引き継いでいる印象です。広谷賢次の狂気をさらに割増ししているような感じで!
あと、鈴木亮平さんの上林は『新・仁義なき戦い/謀殺』で渡辺謙さんが演じた藤巻もちょっと入ってます。向こう見ずに組織に反抗するところなんかが同じですね。
セリフについてですが、私は山口県出身なので方言が広島と半分くらいは同じ(多分)ということもあり、『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』と『孤狼の血』シリーズで使われている広島弁は結構敏感にキャッチしています(笑)。
仁義と県警は脚本が笠原和夫さん、『孤狼の血』は池上純哉さんです。 池上純哉さんも笠原和夫さんを研究した上でこの作品に臨んでいるかと思いますが、個人的には日岡の『はぶてて(すねて)』が嬉しかったですね。あと、上林の『たいぎいんじゃ〜(めんどくさいんじゃ)』も笠原和夫さんが使ってないやつだったので新鮮でした。
それから、オマージュということでいうと、中村梅雀さん演じる瀬島の意外性に満ちた役どころは、どんでん返しが目玉の『ワイルドシングス』シリーズを彷彿とさせます。いや、きっとこれをイメージしてるはず。
思うに、『アウトレイジ』の向こうを張るというよりは、『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』を白石和彌監督のフィルターで再現したのが、『孤狼の血』シリーズなんじゃないかなと思いました。
というように、この作品が影響を受けている過去の名作も観てみることで、より楽しさが倍増するんではないかなというところです。
B’zが好きだったらエアロスミスも聴いてみた方がいい、というのと同じですね。
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日岡秀一(松坂桃李)の程よい『オラつき化』が心地いい
1作目では空手経験者ながらも真面目で堅物な好青年だった日岡刑事が、今作では不良刑事に変身してます。
しかし、突然ヤンキーになった高校デビュー少年のような違和感はなく、3年で自然に変わっていった感じが出せていて、そこはよかったですね。
冒頭で上林組のカチコミを抑えた後、チンピラなルックスながらも矢島健一さん演じる友竹刑事との会話ではまだ恐縮している態度を見せています。もしここでガミさんみたいなチンピラな態度を取っていたとしたら、随分イキってきたな〜と違和感を感じてしまったでしょう。
これは、白石和彌監督が過去に作った『日本で一番悪い奴ら』で 綾野剛さんが演じた諸星が良い経験になっていて、これをさらに上手く料理したんだろうなと思います。綾野剛さんの時はすぐにオラついてしまっていたのでそこが違和感だったんですよ。
『県警対組織暴力』だったら菅原文太さんは若手の時からこんなだったんだろうな、と思えるから自然なんですけど、綾野剛さんは好青年からすぐに不良刑事になっていて、高校デビュー感がハンパなかったんで。
また、尾谷組や仁正会の構成員と会話するシーンでも、オラつかず敬語で喋っているというのもリアリティがあってよかったですね。
その上で、大上の後継者として強気な捜査を仕掛けていく、そして清濁合わせ飲む姿勢もいくらか身につけている、と。
さらには、大上を反面教師にしている部分もあり、自分は上手くやっているという自負を持っているという設定も、日岡の人間的魅力を際立たせていたかなと。
あと、個人的には、役作りで痩せなくてもよかったのかなとは思いました。最後にアクションがあるんだから、逆に肉体派になっておいた方がさらに迫力出たんではないかと。
痩せた日岡もカッコイイのは間違いないんですけどね。
鈴木亮平の上林…1回きりの登場はもったいないくらいのハマリ役!
鈴木亮平さんが今回の『孤狼の血 LEVEL2』で悪役をやると聞いて、ほんとにできるんかいな、って思ったんですね。正直なところ。
でも、蓋を開けてみるととんでもないワルでしたね、上林は!
ワルいんだけど、子分からの人望は結構厚くて、劇中ではそんなに出てきませんが面倒見の良さだったり、時折見せる優しさみたいなところのある人物なのかなと思いました。
アウトレイジで北野武監督が演じた大友みたいに蘇って、また次回作にも登場してきてほしいですが、これは無理がありますね(笑)。
でも、鈴木亮平さんの悪役はほんと凄いですから、『仁義なき戦い』シリーズで松方弘樹さんが何度も別の役で登場したように、LEVEL3でも是非出演していただきたいですね!
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『孤狼の血 LEVEL2』は脇を固めるキャストも絶妙な人選!
ヤクザ映画というとVシネをイメージしてしまいます。竹内力さん、哀川翔さん、小沢仁志さん、白竜さんとか。
それに対して『孤狼の血』シリーズは、えっ、この人で大丈夫?っていう人がキャスティングされているけど観てみたら超ハマってるって感じですね。
江口洋介さんも良かったですし、LEVEL2では斎藤工さん演じる尾谷組若頭も良かったです。本来、悪い役って似合わないイメージがあるんですけど、全然そんなことなかったです。
音尾琢真さん演じる加古村組の吉田が今回も風体を変えて登場したのも良かったですね。怪しい成金社長みたいになっていて、最初、音尾琢真さんとわかりませんでした(笑)。
そして『極道の妻たち』のかたせ梨乃さんが出てくれたのも嬉しかったですが、極妻よりはあっさりな感じで、そこはベテランが胸を貸すような感じで出てくれたのでしょうか。。
あと、寺島進さんもオーソドックスな演技に終始していて、あまり出しゃばらない感じではありましたが、存在感はビシっと出してくれましたね。
個人的に一番よかったのは、ピアノ講師の筧美和子さん。
家の中で上林たちに追われて後退りするシーンでは筧美和子さんのスタイルの良さが活かされていて、きっとDVD化されたらそこの部分を何度もリピートする男性ファンが続出しそうな予感です…。なかなかに、迫真の演技でしたね、筧美和子さん。
あっ、それから!
村上虹郎さん演じるチンタは、お父さんの村上淳さんが『新・仁義なき戦い。』で演じた鉄をリンクさせてますね、絶対。これも見比べてみると面白いはずですよ。村上虹郎さんはお父さんの演技を上手く吸収している印象で、そこも想像しながら観ると面白いです。
『孤狼の血 LEVEL2』で物足りなかった部分
ここからはお金を払って映画館で観たお客として、率直な意見を述べさせていただきます。
『孤狼の血 LEVEL2』は、最初から最後まで観る者を興奮の坩堝に引き入れる作品だったと思います。大満足です。
その上で、もうちょっとここがこうだったら…というところもあります。
今回は、ちょっとセリフでの説明が足りなかったかなと思っています。おそらく、プロットと脚本が撮影時点で緻密に構成されていなくて、現場でなんとかしようという余地があったために結果、描写の抜けている箇所がいくつもあったんじゃないかなと感じました。
例えば、日岡が3年間でどれだけ変わったか、呉原東署での立ち位置、評判はどう変わったのか、という情報に乏しいので、視聴者が置き去りにされてしまうような感じでした。
県警本部の会議で『あがあな不良刑事』と陰口を言われるシーンでもうちょっとその評判を教えてくれてもよかったかなと。日岡がどの程度ダーティなのかがわからないんですね。
で、尾谷組や仁正会の幹部と日岡の関係性も違和感があって、ちょっと貫目が足りないんですよ、日岡は。若い刑事なんで。なんというか、ヤクザ側が頭を下げすぎているような気がします。
陰では『あんな若造』というように馬鹿にしているようなシーンがあったらかなりしっくりきたと思います。
そして非常に違和感だったのが、前作で日岡に嵌められて刑務所にブチ込まれた一ノ瀬が、『日岡さんにくれぐれもよろしゅう』と橘(斎藤工さん)に伝言していることです。
仁正会との手打ちを取り計らったから感謝されているというのも理解できないし、このへんの関係性も、セリフをもう1つ2つ増やして誰かに語らせるだけでも違ったんじゃないかと。
[the_ad id=’580′]中村梅雀さん演じる瀬島の立ち位置も謎です。アパートがガラガラで…のシーンの後に、もうちょっと種明かししてくれてもよかったですね。
宮崎美子さんは本当の妻なのか、息子は本当にいたのか、も曖昧ですし、最後の登場シーンでも、西野七瀬さんにそこまで恨まれるポイントはどこにあるのか、とか。
西野七瀬さんといえば、真緒が尾谷組側の人間(シマ内で店を開いている)なのに、弟のチンタが上林組にいる、というのも、もうちょっと丁寧に設定してほしかったです。
だったら、これはトップシークレットなわけですからチンタは気軽に真緒の家や店に行ったらいけません。日岡も、そこは慎重にやらないといけないはずです。
一番よくなかったのは、上林がピアノ講師を襲撃した際、普通に証拠を残しているという部分です。県警が日岡を陥れる計画でいることは上林は知らないわけで、あの事件を起こす時点で証拠の残るようなことを気軽にやるのはおかしいです。すぐ捕まっちゃうでしょ!
それから、あともう1つ。
中村獅童さん演じる安芸新聞社の記者の立ち位置も不明瞭でした。なぜ日岡を嗅ぎ回るのか、なぜ上林に協力したのか、なぜ、上林に協力しているのに反目の日岡にも情報提供するのか。
特ダネの為に双方をかき回すことが狙いだったとしたら、その狡猾さがわかるシーンを1つ入れて欲しかったです。一体、何がしたいのかがわからなかった。義憤に駆られて動いている感じでもないし。
というように、噛み合っていないところがこの映画は多すぎた感があって、そこをクリアしてくれたらさらに最高でしたね。
ただ、細かいことは考えず、
Don’t think, feel!!
なマインドで観る分には、普通に最高なアクション映画です。サスペンスとしては、上記のような注文を付けさせていただきました。
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『孤狼の血 LEVEL2』で一番よかったシーン
個人的なベストシーンは、マニアックですが日岡のベンツが初めて登場するシーンです。瀬島が羨ましそうにしている、あのシーン。
日岡はきっと大上の後を継いで尾谷組から袖の下の税金を貰い続け、それを律儀に貯金してベンツを買ったんじゃないか、と想像したら非常にリアリティ出てくるんですよ。
根は真面目だから、遊ばないし飲まないし、無駄遣いしない、と。
でも、舐められないように高級車を買って乗り回し、俺は普通の刑事じゃないぞ、若いからって甘く見るなよ、という威嚇をしているわけです。
でもってこれが、手入れしてない汚いセドリックだったりすると、大上感が出て逆にイキり度アップになってしまうという。
なので、ベンツで移動しているのはホント、日岡らしくてよかったです。
と、思うままに感想を書いてみましたがいかがでしょうか。もしよろしかったら、あなたの『孤狼の血 LEVEL2』を観た感想も教えて頂ければ嬉しく思います。
作品関係者の方からの記事を読んだご意見も大歓迎です!宜しくお願い申し上げます。